成年後見制度」とは、判断能力が不十分な方々を法律面や生活面で保護したり支援したりする制度です。認知症、知的障がい、精神障がいなどをお持ちの方と契約をする場合、判断能力が不十分になり、ご自分で介護施設への入所契約をすることや、預貯金の預入、解約、遺産分割協議などを行うことが難しくなり、そのことによって不利益をこうむるおそれがあります。
 そうならないようにするための制度が「成年後見制度」です。選ばれた後見人が、本人の財産を管理したり、診療・介護・福祉サービスなどの契約を締結します。後見開始後、後見人は家庭裁判所の監督のもとに置かれますので、安心してご利用できます。
 この「成年後見制度」には、家庭裁判所に申し立てを行う「法定後見制度」と、公正証書でつくられた契約書による「任意後見制度」があります。

◆法定後見制度
 判断能力が不十分になっているご本人について、家庭裁判所に後見開始の審判の申し立てをして成年後見人を選任してもらう制度です。成年後見人がご本人の利益を考慮して本人を代理して法律行為を行ったり、ご本人が行った不利益な法律行為を取り消したりすることによってご本人を保護します。

◆任意後見制度
 ご本人に十分な判断能力があるうちに、近い将来、認知症などによって判断能力が著しく低下した場合に備えて、事前に自らが選んだ代理人(任意後見人)に、自分の生活、療養看護や財産管理に関する事務について代理権を与える契約(任意後見契約といいます)を、公正証書で作成する制度です。
 私たち司法書士は、法定後見の申し立てや任意後見契約の作成など、必要となる手続きをお手伝いさせていただきます。お気軽に電話またはメールでお問い合わせください。

 今まで、判断能力が不十分な方に対しては「禁治産・準禁治産者宣告」という制度がありました。判断能力が不十分な方を「禁治産者」として財産管理などを制限していたのです。しかし、禁治産者・準禁治産者になると、本人の戸籍にもそのことが記載されるため、社会的な偏見や差別を生むといった問題が生じました。
 そのため、平成12年の「民法改正」により、「成年後見」が介護保険とともにスタートしました。この制度は、障がいのある方も家庭や地域社会で暮らせる社会にしようというノーマライゼーションの考え方や、判断能力の不十分な方々を保護しようという考え方に基づいています。

法定後見」には「後見」「保佐」「補助」の3つの類型があり、サポートする人に与えられる権限や職務の範囲がそれぞれ異なります。
後見」の対象となる方は、日常の買い物が全くできない状態、つまり判断能力が全くない方です。後見人には、対象者の財産管理や法律行為をおこなう「代理権」と「取消権」が与えられます。「取消権」とは、サポートされている人がおこなった法律行為を取り消すことができる権利です。
保佐」の対象になる方は、日常的な買い物などは一人でできるけれど、不動産を売買するといった重要な財産行為をおこなう時に、誰かの支援が必要な方です。保佐人には、借金や相続の承認、新築や増改築などの不動産に関する行為に「同意権」と「取消権」が与えられ、これらの行為をおこなうには、保佐人の同意が必要となります。もし、保佐人の同意を得ずにこれらの行為があった場合には、取り消すことができます。
補助」の対象者は、日常的な買い物などは一人でできるものの、重要な財産行為について、一人で適切におこなえない恐れがあり、他人の援助を受けたほうが安心だという方です。

後見」や「保佐」の対象となる方は、医師や税理士などの資格、会社役員、公務員などの地位を失い、印鑑登録が抹消されます。