「終活」は2009年に週刊誌で紹介されてから話題になり、急速に広まった新しい言葉です。
「終活」というと、お葬式やお墓ばかりに注目が集まりがちですが、それだけではありません。医療、介護、年金、資産管理、住まい、これからの暮らし方など、人生における「後半期のライフプラン」という広い分野がカバーされています。
「終活」とは、私たちが高齢者となったとき、人生の最期のときを意識しながら、「これからの人生を自分らしく生きるための準備」「亡くなった時の備え」を今のうちから考え、それに備えていくことなのです。
日本は世界でも有数の長寿国です。厚生労働省の平成29年簡易生命表によると、日本人の平均寿命は男性81.09歳、女性は87.26歳に達し、100歳以上の人は6万9千人を超えています。超高齢化社会が進行するにつれて、単身高齢者の孤独死、認知症患者の増加、空き家問題、相続トラブルの増加など、さまざまな社会問題がクローズアップされるようになりました。
このような状況の中で、高齢者は「自分の最期は自分で決めたい」と考え始め、家族から「相続後のことを早く決めておいてほしい」というニーズが強くなりました。そのため、高齢者が今までの人生を振り返り、これからの生き方を展望するとともに、万が一のために家族に伝えておくべきことを整理しておく「終活」の重要性が増してきたのです。
では、終活では具体的に何を行うのでしょうか。主に5つの分野があります。
1.医療・介護 病気になった時に備え、治療方法、告知、終末医療などの希望を家族に伝えておきましょう。病歴や服用している薬、かかりつけの病院・ホームドクターなども分かるようにしておくと、介護が必要になったときに役立ちます。万が一にも認知症などにより、判断が困難になったときのために、任意後見制度や民事信託についても調べておくと良いでしょう。
2.財産 長い老後生活には、健全な家計を維持することが必要です。年金などの定期的な収入を把握しておくことはもちろん大切ですが、預貯金や有価証券などの金融資産を、適切に管理しておくことも重要です。どこにどのような財産があるのかを確認し、記録しておくと、これからの安心な生活につながります。
3.住まい 高齢者が自宅で安心して暮らせるように、手すりを設置したり、段差を解消する「バリアフリー改修」をお考えなら、低利の融資制度や、自治体によっては補助金制度が準備されています。また、心身が衰えてきたり、病気が悪化したりた際には、高齢者住宅への住替えや施設への入所も考えなければなりません。高齢者住宅・施設にはさまざまな種類があり、自立できる人、軽度の要介護度の人、重度の要介護の人など、それぞれの状態によって入居・利用できる住宅・施設も異なってきます。各施設のサービス内容や費用などを前もって調べておくとよいでしょう。
4.相続 相続を考えるには、まず誰を相続人にするか、どんな財産があるかを確定しなければなりません。最近は、離婚、再婚、独身の増加により、家族関係が複雑になってきました。そのため、ご家族が亡くなったとき、思ってもいない人が相続人として名乗り出ることもあります。万が一のことが起こる前に、誰が相続人になるのかをあらかじめ確認しておきましょう。
相続財産には、金融資産以外に不動産や会員権、さらには負債や保証債務など負の財産も含まれます。また、最近はネット銀行やネット証券などは、通帳がないためにわかりにくい財産も増えています。これらの財産や負債を名寄せし、記録しておくと、万が一の時に、家族の手続きなどがスムーズになります。
相続で最も大切なことは、遺産分割時のトラブルを避け、円滑な財産承継をすることです。そのために「遺言書」を作成しておくことは、とても有効な手段です。遺言は法定相続分に優先しますから、相続人の意思を最も有効に反映します。現状では遺言書を作成する人の割合はまだ少なく、日本人全体の10%以下ですが、今後は増加することが予測されます。終活においては、相続トラブルにならないために、このような事前対策とともに、日ごろからの家族間のコミュニケーションをとっておくことがとても大切です。
5.葬式・お墓 最近は葬式にもさまざまな様式があります。葬式の希望や連絡先リストをご家族に伝えておくことも、万が一の際に役立ちます。またお亡くなりになると預金口座が凍結されてしまうため、葬式費用や当面の生活資金を家族の口座に用意しておくとよいでしょう。お墓についても、永代供養墓や納骨堂など跡継ぎのいらないお墓や、散骨、手元供養などさまざまな形があります。お墓の希望などについても、家族とよく話し合っておきましょう。
○エンディングノートを活用する 「終活」に関する5つの分野について書きましたが、これらの内容を整理するために便利なグッズが「エンディングノート」です。「エンディングノート」は前述の5分野をはじめ、終活に関するさまざまな項目を書き込めるようにつくられています。「エンディングノート」のもっとも大きなメリットは、「整理する」「伝える」ことができることです。書き出すことによって、「終活」に必要な情報の整理ができるとともに、万が一の時にはそれらの情報を家族にも伝えることができます。さらに、備忘録としても役立ちます。 |