父親が多額の借金を残して亡くなりました。債権者に支払わなくてはいけませんか?
 民法896条には、相続人は「財産に属した一切の権利義務を承継する」と規定されています。これは、預金や土地などの財産のみならず、借金も相続することを意味します。したがって、相続した場合は、相続人が借金の支払いをしなければいけません。
 ただし、相続人には自らの意思で相続をしないことを選択できます。これを「相続放棄」といい、一切の権利義務の承継を免れることができます。土地や預金を手にすることはできなくなりますが、借金の支払いも免れることができます。「相続放棄」は、家庭裁判所で手続をします。相続の開始があったことを知った日から、3か月以内に申請しなければなりません。
父が亡くなり、父名義の不動産を私の名義にしたいと思います。母と結婚した妹は同意ですが、弟は15年前から音信不通で、連絡先も分かりません。弟と連絡がとれないと、名義変更はできないのでしょうか?
 お父さんが遺言書を残していない場合、法律ではお母さんが2分の1、相談者と弟さん、妹さんが6分の1を相続する権利があります。そのため、不動産を単独名義にするには、相続人全員での「遺産分割協議」を行わなければなりません。その中に行方不明者がいる場合、利害関係人として家庭裁判所に「不在者財産管理人選任申立」を行います。弟さんの代わりとして、協議に不在者財産管理人を参加してもらうという方法があります。
 家庭裁判所に選任された不在者財産管理人は、一時的に弟さんの財産を管理することができるとともに、特別の許可を得て遺産分割協議を行うこともできます。弟さんの消息がわかれば、管理人は財産を弟さんに返します。弟さんの生死が7年以上不明であれば「失踪宣告」手続きにより「死亡したものとみなす」場合もありますので、家庭裁判所に申し立てましょう。
再婚した父が5年前に亡くなり、再婚した義母が今年亡くなりました。二人の間には子供はいません。義母の財産は相続されますか?

 相続人の順位についていうと、まず配偶者が第一の相続人です。そして次に子供が相続人となります。子供がいない場合、親が相続人となります。子供も親もいない場合は、兄弟姉妹が相続人となります。
 あなたのケースでは、再婚された義母と養子縁組をしていない限り、あなたは相続人とはなりません。ただ、あなたに財産を与えるという遺言書があれば、あなたも財産を受けることができます。

夫婦に子どもがいない場合、遺言書をつくっておいた方がよいと聞きました。父母は亡くなっていますが、夫の姉と弟がいます。どうすればよいでしょうか?
 夫が先に亡くなられた場合、相続人は妻とお姉さん、弟さんになります。お姉さん、弟さんが亡くなられている場合は、その人の子ども(おい、めい)が代わりに相続人になります。
 遺言は、亡くなったあとの財産をどうするかという意思を書き記します。法律に定められた割合と違うかたちで相続させることや、相続人以外に財産を残すこともできます。もし、妻だけにすべての財産を残したいなら遺言書の作成をおすすめします。遺言書があれば、スムーズに財産を妻名義に変更できます。遺言書を作成していないと、妻とお姉さん、弟さんとの間で遺産分割協議をしますが、協議がまとまらない限り妻一人の名義にはできません。
遺言書には、自筆と公正証書があると聞きました。どちらがいいのでしょう?
 自筆で書かれた遺言書は、自分一人でいつでも書けるので費用も掛かりません。全文と日付を自書して、署名と押印をすればでき上がります。しかし、自筆の遺言書の場合、内容がはっきりしていないと無効になったり、相続人の間で遺言解釈の相違が原因で争うこともあります。また、遺言書そのものが発見されないこともあります。
 公正証書の遺言は、公証人が遺言の趣旨に基づいて作成・確認し、証人2名とともに署名押印しますから、遺言者の真意が伝わりやすい、原本が公証人役場に保管されるので、偽造や変造のおそれがないなど、多くのメリットがあります。ただ、公証人費用がかかること、証人に遺言の内容が知られるというデメリットもあります。
夫が死亡の際、「不動産は妻に相続させる」という旨の遺言書を残しています。子どもが1人いますが、どのような手続をすればいいでしょうか?

 遺言書があれば、その内容に基づき、相続による不動産の「名義変更」手続をします。遺言書と、夫の死亡証明書類、妻であることのわかる戸籍謄本、住民票などをそろえて「相続登記手続」をします。
 お子様は、法律で定められた相続人にあたり、財産の「遺留分」の権利をもっています。お子様は、権利を保障するために「遺留分減殺請求」をすることで、遺産を取り戻せます。ただし、取り戻しができるのは、本来の相続分の2分の1となります。

叔父が死亡の際「不動産をおいに遺贈する」という旨の遺言を残しています。叔父の妻は死亡、子どもが1人います。どのような手続をすればいいでしょうか?
 遺言書があれば、その遺言の内容に基づき、遺贈による「所有権移転」登記手続ができます。ただし、遺贈の場合は、相続人のみで登記手続を進めることができません。相続人全員とともに手続をしなければなりません。遺言書に「遺言執行者」が指定されていれば、遺言執行者とともに手続を行います。
 お子様には、「遺留分」という権利があります。お子様は、権利を保障するために「遺留分侵害請求」をすることによって、遺産を取り戻すことができます。ただし、取り戻しができるのは、本来の相続分の2分の1となります。

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